淋病とはどんな病気か

淋病は性感染症の一つです。

性感染症の中では、クラミジアについで感染数が多い感染症といわれています。

感染した初期の状態や、感染場所によって症状が軽微で気が付きにくいこともありますが、放っておくと症状が重たくなったり、パートナーへ感染させてしまうので注意が必要です。

また、最近では「不治の感染症」といわれるほど、淋病菌の抗生物質に対する耐性が上がっており、本当に治療が困難な淋病に感染する可能性も0ではありません。

治療方法を理解するだけでなく、予防をしっかりする必要もあります。

ここでは淋病がどんな病気か、解説します。

淋病の概要

淋病の患者数は報告されている数ベースでいくと、2018年の調査では8000人程度とされています。

厚生労働省‐性感染症報告数
https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html

ただし、あくまで報告ベースの数字であり、症状が出ていなかったりして病院に行かない人も多数いるため、潜在的な感染者数で考えるとさらに多くの患者がいると考えられます。

淋病の感染経路は、ほぼ性行為のみで、それ以外で感染することはあまりないといわれています。

そのため感染している患部も、性器かあるいは口の中であることが多いです。

また、クラミジアと合併している確率は40%程度と高く、淋病に感染していた場合はクラミジアの感染も疑われます。

淋病を放置しておくとどうなるのか?

淋病に感染しても、初期のころはあまり症状が出ないか、ちょっとした違和感で終わってしまう可能性があります。

しかし放置しておくと、この淋病菌が最初に感染した患部(主に性器、口)から感染部位を広げていきます。

そうすると、男性の場合は尿道炎やそのほか男性器周辺の様々な器官に感染し炎症を引き起こし、感染箇所によっては下腹部に強い痛みを表すことがあります。

女性の場合も膣炎や子宮内膜炎など、周辺へと感染し炎症を起こし始めると下腹部に強い痛みを引き起こします。

痛みがでると生活に支障をきたすので、このタイミングでは治療が必須となりますが、感染の疑いがある場合は、できれば症状が出る前から治療を行うことが望ましいです。

後述の治療方法で詳細を記載しますが、淋病菌は年々様々な薬に対して耐性を付けてきており、治療方法が随時変わっていっています。

現在はまだいくつか確実な治療方法がありますが、耐性が強い淋病菌に感染している場合は、治療期間も長引いてしまい、その分痛みに悩まされたり、生活に支障がでるので早めの治療を心がけましょう。

また、将来いつ「淋病」が治療できない感染症になってしまうかわからないほど、この淋病の菌は耐性を付けてきているため、しっかりと予防方法も理解しておきましょう。

淋病の治療方法について

淋病の治療には、いくつかの薬があります。

しかし、淋病の菌によってはすでに薬に対する耐性を付けているものも存在しており、薬があるといっても、現状日本でほぼ100%効くとされるもの、40-50%の確率で効くとされているもの、もう70-80%以上の菌が耐性を付けている薬など、薬によって治療できる確率が変わります。

また淋病のような感染症の場合は、地域性も存在しており、日本国内だけではそこまで大きな差はありませんが、全世界で見ると、日本で感染した淋病と、海外で感染した淋病では、治療方法が異なることもあります。

特に日本よりも海外のほうが、耐性が強い淋病の菌が見つかっているので、海外で感染した可能性がある場合は、非常に注意が必要です。

淋病の菌は常に耐性を付けながら進化をしており、現在は日本国内の淋病であれば確実に効くとされている薬がいくつかありますが、将来どうなるかわかりません。

2016年に日本の性感染症学会から発表されているガイドラインの情報を整理すると、以下のような治療方法が考えられます。

成分 タイプ 解説
セフトリアキソン 注射薬 99%
おそらく現在、日本の淋病治療で第1選択薬として利用が検討される薬です。この治療法であればほぼ完治すると考えられます。
スペクチノマイシン 注射薬 100%
セフトリアキソンと同じく、日本の淋病治療で第1選択薬として利用が検討される薬です。注射による投薬で、こちらもほぼ完治すると考えられます。
セフィキシム 経口薬 -(同第三世代セファロスポリンの中では高い)
このセフィキシムは第三世代セファロスポリンという分類に含まれますが、その中では最も効果が高いと考えられます。
第三世代セファロスポリン系 経口薬 30-50%(薬による)
この第三世代セファロスポリンという分類に含まれる薬では、全体的に30-50%の確率で効果を発揮するといわれています。
アジスロマシン 経口薬 不明
クラミジアでも利用されるジスロマックの成分です。日本の臨床結果で90%効果があったと報告がありますが、耐性がある菌も確認されており、第1選択薬としては推奨されていません。
ニューキノロン系抗菌薬 経口薬 20-30%
ニューキノロン系として様々な薬がありますが、現在の淋病菌は70-80%程度がこの薬の耐性を付けており、この治療方法は現在はほぼ使われません。
テトラサイクリン 経口薬 37.4%
テトラサイクリンも、現在の淋病菌は70%程度がこの薬の耐性を付けており、この治療方法は現在はほぼ使われません。

*感受性は「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016 (改訂版)」および「東京都感染症情報センターの2010‐2012年の調査」を参考にしています。(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/epid/y2013/tbkj3402/)(http://jssti.umin.jp/pdf/guideline-2016_v2.pdf)

淋病の治療の場合は、注射薬のセフトリアキソンやスペクチノマイシンがよく利用されます。

現在この2種類の薬は日本での淋病の感受性(薬が効くかどうか)がほぼ100%に近く、優先して利用されます。

アレルギーなどの場合は、ほかの薬の治療も検討されますが、アレルギー以外の理由では、あまり利用が検討されません。

上記の2種類の薬以外では再度病院で検査が必要となりますが、患者が再度病院に来ないことも多いのです。

そうすると、淋病が完全に死滅させられていない可能性があり、これは淋病が耐性を持つきっかけになってしまうので、医師としてはなるべく100%治療が完了する方法を優先しています。

現状はこのような治療方法が様々考えられますが、一方で上記に記載のある「第三世代セファロスポリン」に所属しているセフォジジムは、ほぼ耐性ができてしまったということから2016年に薬が廃止となっています。

また、2018年には多くの抗生物質が効かない淋病菌の感染が世界で確認されました。

感染者はイギリス人男性ですが、感染経路は東南アジアといわれています。

かなり多くの抗生物質に耐性を示し、ほとんど淋病で使われないような抗生物質を様々試しながら治療が行われているといわれています。

このように、治療できる薬も刻一刻と変わっており、菌によっては治療困難な可能性も出てきました。

そのため、治療方法を知るだけでなく、しっかりと予防方法を理解しておく必要があります。

淋病の予防方法

淋病の予防に当たっては、男女ともにまず性行為でコンドームを付けることが重要です。

コンドームを付けていれば高い確率で感染症を防ぐことができます。

ただし、コンドームも100%ではなく、破れたり中でコンドームが外れてしまう可能性も0ではないので、注意が必要です。

また、口に淋病菌を持っている人もいるため、いわゆるオーラルセックスでも、感染する可能性は高まってしまいます。

このような可能性を考慮すると、最も高い予防方法は、パートナーと一緒に、お互いで常にこの性感染症を警戒しておくことです。

性行為以外での感染可能性は低いので、お互いに淋病を持っていなければ、どちらかが外部から淋病をもらってこない限り、感染することはありません。

仮に外部からパートナーが感染する可能性がある場合は、検査を定期的に受けることが大事です。

自宅で簡易にできる検査キットもあるため、そういったものを活用してもよいでしょう。

また風俗などでは、定期的に検査などをしているところもありますが、常に感染リスクがあるため、なるべく控えることが賢明です。

2019/04/30