クラミジアの症状
クラミジアは自覚症状に乏しく、しかしじわじわと確実に進行していく感染症です。クラミジアは性器またはのどに感染する細菌で、それぞれ性器クラミジア、咽頭クラミジアと呼ばれます。
いずれも自覚症状に乏しく、このため気付かないうちに感染が蔓延してしまいがちな病気ですが、自覚症状がないからといって決して安全な細菌ではありません。クラミジアは放置すると不妊や子宮外妊娠を引き起こす恐ろしい性感染症です。
性器にできるクラミジアについて
男性
男性は女性に比べると自覚症状が出やすく、およそ半数の方に自覚症状がみられます。
初期症状として現れやすいのが、尿道炎です。排尿時、尿道が熱くひりひりするような灼熱感を感じ、痛みを伴います。また、排尿時以外にも尿道から水のような分泌物が出てくるようになり、この分泌物は病気が悪化するにつれて白い膿がみられるようになります。
この他、鬼頭付近が赤く腫れ、かゆみが生じることもあります。
この状態で放置すると、クラミジア菌がさらに増殖し、尿道を通って感染が広がっていき、前立腺炎や精巣上体炎を引き起こします。
前立腺というのは、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲んでいる器官で、精液を作っている場所です。精子は、精巣から精管を通って前立腺に到達し、ここで分泌液と混ぜ合わされることで精液が完成します。前立腺に炎症が起こると、すぐ近くにある膀胱が刺激を受け、排尿痛や頻尿がみられるようになります。また、前立腺は尿道を取り囲む構造であるため、炎症によって腫れると膀胱が締め付けられて、排尿が困難になり、残尿感や尿が出始めるまでに時間がかかるなどの症状がみられるようになります。また、前立腺炎では発熱がみられることも知られています。
精巣上体は、睾丸(精巣)の上部にある副睾丸と呼ばれる器官のことで、精管を通して前立腺とつながっています。精巣で作った精子は、精管を通って前立腺に送られ、精液の材料になります。前立腺炎がさらに進行すると、精管を通って精巣上体まで感染が広がります。精巣上体炎では、陰嚢全体に痛みが広がり、赤く腫れます。発熱もみられ、陰嚢自体も熱をもつようになります。炎症が起こると、その周辺の組織は癒着しやすくなります。精巣上体炎では、精子の通り道である精管に炎症があるため、男性不妊の原因にもなります。
女性
女性では自覚症状がより乏しく、5人に1人程度しか症状を自覚できないといわれています。
クラミジア菌は子宮頚管の細胞内で増殖するため、まず子宮頚管炎として発症します。子宮頚管とは膣と子宮をつないでいる場所で、子宮の入り口にあたる部分です。この段階では自覚症状はほとんどなく、炎症の程度も軽いため痛みはありません。水のような帯下(おりもの)の量が若干増えることが知られています。また、不正出血がみられることもあります。
進行すると、子宮内膜炎、付属器炎が生じます。付属器とは卵巣や卵管などのことです。この段階でもやはり炎症は軽く、自覚症状としては微熱や腹部の違和感、軽い下腹部痛、性行時の痛みなどが現れるようになります。
卵管の末端は開いた構造になっています。つまり、膣、子宮、卵管と腹腔は一本道でつながっています。このため、増殖したクラミジア菌は腹腔内にも感染することがあります。腹腔内では肝臓の近くで炎症を起こしやすく、監修胃炎と呼ばれます。症状としては、激しい腹痛や高熱がみられます。
また、卵管は卵子と精子の通り道であり、受精する場所でもあります。卵管の細胞には輸送機能があり、受精卵を子宮まで運ぶ働きをしていますが、ここに炎症が生じると、輸送機能が落ちてしまい、子宮まで届けることができずに卵管内で着床してしまいます。これが子宮外妊娠と呼ばれるものです。
そして、男性でお話した精管と同様、卵管で炎症が起こると、癒着して卵子や精子の通り道を塞いでしまいます。これによって通過障害が起こると、不妊の原因になります。
咽頭クラミジア
咽頭クラミジアはのどの粘膜にクラミジア菌が感染している状態です。
症状としては、人によっては軽いのどの腫れ、痛み、発熱がみられます。しかし、やはり自覚症状に乏しく、多くの場合は無症状のまま感染を続けます。
クラミジア菌はのどではあまり悪さをしません。注意すべきは性器に感染させてしまうことです。クラミジア菌は粘膜を介して感染するので、軽いキスや飲みまわしなどでは感染する心配はありませんが、ディープキスやオーラルセックスでは感染する可能性があります。すると、上記のように不妊や子宮外妊娠を引き起こす原因になります。
2016/08/30