感染症解説

妊娠中の性器カンジダ症は治療すべきか?

妊娠中は体内の赤ちゃんへの影響を考慮して、注意しながら生活する必要があります。

特に薬については、自身の体を守るために使用しないといけないこともありますが、胎児への影響も理解して最善の選択をしなければなりません。

特に赤ちゃんに近い性器での感染症は最新の注意を払わなければいけません。

もし妊娠中に性器にかゆみなどを感じ、性器カンジダ症かも?と思った場合は、どういた対処をすべきでしょうか?

まずは治療が必要な性器カンジダ症か見極め

女性の性器カンジダ症でも、治療が必要な場合と、そうでない場合があります。

もしカンジダ症かも?と思ったら、まずはその性器カンジダ症が治療すべきものかどうか、確認をしましょう。

治療すべき性器カンジダ症なのかどうかについて判断するには、まずカンジダ症の症状が出ているかどうか、確認をしましょう。

よくある症状としては、以下が考えられます。

  • 膣内や膣の外の部分が痒い
  • おりものが増えている
  • 白いヨーグルト状のおりものが出ている
  • 膣の中が少し痛い

上記症状はすべてカンジダ症の典型的な症状ですが、これらの症状が出ている場合はカンジダ症を治療をした方がよいと判断されます。

また、性器カンジダ症というのは、カンジダの真菌が性器に存在している状態ですが、菌が存在している状態でも症状がでていない場合があります。

この場合、症状はありませんがカンジダ菌が膣に存在するため、胎児に対する影響を不安に思ってしまいます。

現在の性感染症学会から発表されている性器カンジダ症の治療ガイドラインでは、カンジダ症の症状が出ていない場合は、たとえカンジダ菌が性器にいたとしても治療は必須ではないとされています。

自覚症状がないという点から、もともと妊娠中の隠れ性器カンジダ症の人はそれなりの数がいると推測されますが、症状が出ていないひとは治療がスルーされているということになります。

しかし、カンジダに感染していても、しっかりと元気な赤ちゃんを産む例もあり、致命的な問題ではないので、その点については安心をしてよいでしょう。

性器カンジダ症が赤ちゃんに与える影響はどんなものか?

妊娠中でも、性器カンジダ症の症状が出ているときであれば、治療を行ったほうがよいということがわかりました。

しかし、症状が出ていない場合は治療はしなくてもよいということで、少し曖昧な表現となっています。

理由としては、カンジダ菌に性器が感染していても、直ちに胎児に影響が出るわけではないからです。

性器カンジダ症に感染していて、胎児にこのカンジダ症が感染するのは、出産時に産道を通っているときです。

この時は確かに感染する可能性があり、実際に赤ちゃんが生まれたタイミングでカンジダ菌に感染してしまう例もあります。

生まれたての赤ちゃんがカンジダに感染するとどうなるか?

赤ちゃんがカンジダに感染した場合の症状として、いくつか考えられるものがありますが、よく上げられる症状は「鵞口瘡(がこうそう)」という、口の中に感染するパターンです。

口の中に白いミルクの残りかすのようなものが付き、こすっても取れません。

この「鵞口瘡(がこうそう)」になった場合は、塗り薬などを使って治療するのが一般的です。

この鵞口瘡は生まれた直後だけでなく、その後も小さいころには発症する可能性があります。

原因は、口に含むもの(母親の乳首や哺乳瓶の口元など)が清潔でないことなどが挙げられます。

しかし、場合によっては薬を使って治療をしなくとも勝手に治癒することもあります。

カンジダ菌は元々どこにでもいる菌で、赤ちゃんは生まれたての時は無菌状態なので、これから様々な菌と戦い免疫を付けていくことになります。

ある程度、免疫が強くなれば、大人と同じようにカンジダによる感染は自然治癒する可能性もあります。

上記を鑑みると、万が一生まれたての赤ちゃんがカンジダ症に感染しても、致命的なことではなくしっかりと治療方法もあることがわかりますね。

なるべく赤ちゃんのカンジダの感染を防いでおきたい理由

赤ちゃんがカンジダ症に感染しても、治療可能でそこまで致命的な問題ではないことがわりました。

しかし、それでも感染はなるべく避けた方がよいです。

なぜなら、カンジダ症自体に危険はなくとも、赤ちゃんのころに抗生物質や抗菌薬を使うことで将来その赤ちゃんがアレルギーになる可能性が高まるからです。

いくつかパターンがありますが、例えば2歳までに抗生物質を利用した子供は、7歳以降で喘息の発症率が高まるという報告があります。

喘息だけでなく、アトピーとのような皮膚のアレルギーのリスクも高まります。

また、食物に対するアレルギー発症率も、赤ちゃんの頃の抗生物質や抗菌薬が関わっています。

つまり、赤ちゃんのカンジダ症は、それ自体は治療すればそこまで致命的な影響を与えませんが、治療をする際に使う抗生物質や抗菌薬が赤ちゃんの将来に影響を与える可能性が大きいのです。

もちろん薬を使わないという選択肢もありますが、それも反対に感染をひどくする原因になるので、治療を勧められることになるでしょう。

将来の子供のアレルギーの点を考えると、出産前から性器カンジダ症には気を付けておいたほうがよいということですね。

特に気をつけて治療をしたい妊娠中の性器カンジダ症

胎児が母親の体のカンジダ症の影響を受けるのは、出産前後となります。

そのため、出産前に明らかにカンジダ症になっている場合は、治療をした方がよいでしょう。

また、出産において早産になったり、早産で未熟児が生まれる可能性がある場合は、さらに注意が必要です。

この場合は特に気をつけて治療をする必要があります。

未熟児は感染に対する抵抗力が、ほかの赤ちゃんより弱いので、カンジダ菌であっても重篤な感染症になる可能性があるからです。

  • 早産や早産による未熟児の出産の可能性がある場合
  • 出産が近づいている(36週目以降)タイミングでカンジダ症を確認した場合

上記の場合については、特に気をつけて治療をすすめる必要があります。

妊娠中の性器カンジダ治療はどんな治療方法になるか

妊娠中の性器カンジダ症でも、通常の非妊娠時の性器カンジダ症と治療方法は大きく変わりませんが、1点だけ妊娠中の場合は使わない薬があります。

それが、経口薬(口から飲むタイプの薬)です。

性器カンジダ症には、下記の治療薬を利用することが多いですが、妊娠中の場合は経口薬は使わないようにしましょう。

有効成分 薬のタイプ 薬例
クロトリマゾール 軟膏・クリーム・膣剤 カーネステンクリーム・エンペシドLクリーム
ミコナゾール 軟膏・クリーム・膣剤 フロリード膣剤 ・フロリードDクリーム
イソコナゾール 軟膏・クリーム・膣剤 アデスタン膣剤・アデスタンクリーム
オキシコナゾール 軟膏・クリーム・膣剤 オキナゾール膣剤・オキナゾールクリーム
フルコナゾール 経口薬 ジフルカン

経口薬がなくても通常はクリームや膣剤の利用が多いので、治療は問題ありません。

上記のエンペシドLクリームなどは妊娠中のカンジダ治療で利用しても問題がなく、また市販の薬なので薬局などで購入できます。

医師に診察してもらわなくとも利用することができますが、不安な場合は購入の際に薬局の薬剤師に相談するとよいでしょう。

また、もちろん医師に相談して治療薬を検討してもらうこともできますので、カンジダ症になったと思った場合は、かかりつけの医師に相談してもよいでしょう。

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